重い雲

打ち直ししたき冬雲うつうつと

関東ではあまり見ない雲の季節である。

高さは比較的低い。厚さは相当あるが重くはない。日が当たって明るい部分はあるが中心は黒い。しれらが座布団の乱れた綿のようにいくつも浮いては流れてゆく。
これらの雲は日本海側の空を思い起こさせて気が重くなる。
晴れても関東のようにはからっとはならないのである。

凍える地上

荒星のどれもひとつの物語

凍てつくような星空である。

シリウス、オリオンの三連星、昴、、、、、。
どれも星座の構成員として名前を持っている。
8時頃に空をみてでんと広い空間を占めているのがオリオンで、これが中天に輝き未明には西に傾いて冬の夜空の主役である。
だが、この二三日余りにも寒いというか、震え上がるほど、痺れるくらい凍りつくような空気に長い時間外にたっていられない。地上が凍えれば星も凍えて、凍星となり荒星となる。
NHKスペシャルの地球温暖化2030年特集を見終わって、水蒸気が多くなるとはたして10年後これほど澄んだ夜空を見ることがあろうかという思いが頭をもたげる。
2030だの2050だの欧米のスローガンだけ唱えるだけで、そんな思い切った予算が来年度に投じているようには見えない。ますます、劣等国として世界において行かれるのではないかという憂いが増すばかりである。

転じて雪に

風花の序破急の急短くも

ふと外を見やると風花が降りてくる。

きらきらとダイヤモンドのような固い光りを放ちながらゆっくり落ちてくるのである。珍しいなあと見ていると、やがていつもの風花のように風にもてあそばれるように右左に揺れ空中に漂う間が伸びてきた。
最後はもう吹き上げられるように乱舞の状態になったかと思うと、すっと消えてしまうのだった。
あとは、もとのように冬の日差しがあるのみ。
その後1時間ほどもしないうちに空が暗くなり、今度は雪である。1時間ほど降ったろうか。車の屋根をみると1センチほど積もっているようである。越してきて初めてみる雪景色である。

鴨なりに

隠沼の影を濃くして浮寝かな

鴨にも静かな正月である。

いつもなら冬休み、正月休みには家族連れが押し寄せる公園も餌をばらまく人もおらず、めいめい固まっては昼寝中。
さらに、一日中日が当たらぬ沼にも、よくもあんなに寒々としたところがいいもんだと感心してしまうくらい、不思議にも毎年鴨が渡ってきては春まで過ごすグループがいる。障害物があるほうが外敵から身を守るには適しているかもしれない。
今年は鴨の種類が少ないのが気がかりだが、他にいいところがあるやもしれず、彼らなりになんとかやっているのだろう。

足取り

早梅の一枝ならぬ日和かな

早くも梅がほころんでいる。

臘梅も満開で、昨年中に開花したものと思われる。
河原で発見したオオイヌノフグリやらホトケノザの花だけではない、春へ向けての確かな足取りがあるようである。
今週木曜日頃からまた寒波がくるらしいが、昔のような強烈なものでもないような気がするが、さて。

振り出し

すごろくの一回休みとふ目かな

小さい子供もいないし、何十年と遠ざかっている。

双六の休みの面白さはさいころの目とその数だけ進んだ先の指示。進んだり、戻ったり、休んだり、最悪は振り出しにもどされたり。
思えば昨年は何でもかでも「休」がキーワード。
今年も無論それが続くわけだが、人々が以前のような生活に戻るのはいったいいつのことだろう。
戻ったとしても全く同じというようなことはなさそうだが。

目出度さ中くらい

大年の流し浄むる水の音

今年の水使いも最後の夜である。

すでに晦日蕎麦は食ってしまったし、あとは熱い風呂での締めくくりが残るだけの静かな夜である。
寒いけれど幸いにして雪はない。
おかげさまでたいした病気もせずに年を越せそうです。
みなさんにはどうぞよいお年をお迎えください。