インフラ

期またぎの砂防工事に夏來たる

かれこれ3ヶ月になろうか。

地区のケーブル更新の工事で道路が何度も封鎖されている。
幹線道路下に埋め込んであるのを、マンホールから差し入れては交換しているようで、なぜだかいっぺんにできないようで何度も何度もブロックを変えては工事区間を変えている。
インフラを支えるというのはこうした地道な作業を延々と繰り返し、全区間終了する頃にはまた更新というぐあいに、果てしがないように思えてくる。
それでも、こうした地下のトンネルにある施設などはいいほうで、実は水道とか下水道とか地下に埋めてある設備や橋などの道路資源というのは予算不足などもあって、相当な規模で老朽化していると聞く。
こうした公共インフラの再整備も思うように進まないのが今の日本の実力なのだ。
そうしたときに疫病や災害に見舞われているという現実に慄然とするしかない。

日替わり

日当たりの壁に派手なる毛虫かな

白壁に派手な色した毛虫がとまっている。

そう言えば、柿の若葉にもでんと毛虫がのってたな。
去年、蓑虫が増えたブルーベリーも心なしか葉っぱが食われているようである。
なにしろ10匹以上ぶら下がっていて、これがみんな生きていたらブルーベリーも敵わないだろう。
葉が茂れば虫たちも活発になり、鳥も子育てに忙しい。
いつも一人だったイソヒヨドリが最近増えたようで、電線をあちこち移っては素敵なソプラノを聞かせてくれる。
巣籠もりの毎日だが、句の材料が日替わりに目の前に現れては楽しませてくれる。

後世託すに

夏蝶の付点音符をきざみつつ

何を探しているのだろうか。

ひらひらと来てはまたひらひらと、翅の休まらぬまま飛ぶばかり。
振幅が大きいというわけでもなく、優雅なリズムを刻みながら上下に揺れ動くさまはまるで五線譜に音符を落としてゆくようである。
柚子の葉がもう少し成長して、後世を託すに足るまでになれば翅をやすめることがあろうか。

汝を如何せん

吹くからに虞美人草のしなりやう

風が吹く日が続いている。

ポピーの種がどこからか飛んできたようで、庭で風に吹かれている。
あの細い茎が今にも折れそうだが、これが簡単には折れずしなやかに風を受け流すのである。
四面楚歌のうちに項羽が嘆いた歌で知られるあの虞美人が自死してこの花に化したとか。言われてみれば、一見頼りなさそうでいて芯の強い花なのかもしれない。

逃げ道

孵るだに土遁の術の子蟷螂

今朝の水栓には生まれたばかりのカマキリが張り付いていた。

体長1センチにも満たぬのに、これまたミリに満たない細い体の動きは敏捷である。
人の気配を察するや、栓の裏側に身を隠し隙あらば逃げようとする構え。
全身の神経をこちらに向けているさまはもうカマキリの本領そのものである。
じりじりと距離をあけながら逃げ道を探るのであった。
これが、あとひと月もすればいろいろ湧いてくる虫を餌にしていい若者に成長していることだろう。

外来

水栓の排水口の蟻の列

蟻がうろつく季節となった。

最近はやたら足が速いというか、せわしなく動く蟻が目立って増えてきたようだ。これも外来のものだろうか。
憎たらしくて、水栓の水をひねったら何匹かが排水口に吸い込まれていった。

戸外事務

戸を放ち簡易郵便局薄暑

ドアを開けたままで風が出入りしている。

中に入ると窓口にはビニール仕切り。
三密防止だろうが、時勢である。
本局に行くことを考えれば、田舎の小さな局のほうが客も少なく幾分ましである。
そう言えば、宅配便営業所でも受付は戸外でやっている。
こうした事務を外でやってもちっとも苦にならない季節到来である。