蘇る

新涼や電気剃刀滑らかに

今朝は涼しかった。

朝の最低気温は22度だという。
エアコンを入れない夜は久しぶりであった。
不快な汗もかかなかったので、電気剃刀が皮膚のうえを滑らかに動く。

通勤の朝、洗顔をすませても汗がにじんだ顔に電気剃刀をはわすこと自体が不快で、夏の間は昔ながらの剃刀を当てた記憶が蘇ってきた。

首まで浸かる

浴槽に浸るも久し夜の秋

風呂上がりが快適な夜だ。

ここ2,3日、ようやく夜の気温が落ち着いてきている。
いわゆる熱帯夜が続いている頃には体も火照っているせいか、風呂上がりの爽快感からは遠くエアコンの助けを借りてやっと一息つけるという有様だった。
だからいつもはカラスの行水程度だったのが、今日は首まで湯船に浸かってみても苦しくはない。

熱帯夜から解放されると思うだけで充分涼しいことは体が一番知っているようだ。

風化

語り部を継いで二代目原爆忌

総理と原爆被害者の会との会談の何と虚しいことか。

悲痛な希求に対する答えが国会答弁のそれと全く同じとは。
悲惨な体験から叫びに近いリアルな言葉に対して、空虚にしか聞こえない為政者の言葉、態度のギャップを見て、これ以上この国を冒険主義的な人々によって先導されないことを願うばかりである。

アメリカとかつて戦ったことさえ知らない若者がいることに唖然とさせられたが、唯一の被爆国であることもまた風化して行くのであろうか。

瓜を食む

捨てるには惜しき香りの瓜のわた

立秋が過ぎてもなかなか秋の句を詠む気にならない。

夏の題なら材料にまだまだ事欠かないほど、秋にはほど遠く暑い日が続いている。
まことに残暑ますます厳しい折りである。

雷雨が止んで

軒の下なれば雷鳴聞き惚れる

久しぶりの雷雨だった。

昼寝を貪っていた猫たちも起き出してきては落ち着かない様子だ。
衛星テレビも電波障害で見えなくなるほどの激しさ。
最近はデータ放送で雨雲の様子が見えるのでさっそく調べてみたところ、これは当分続きそうだと分かる。雲の行く先はどうやら甲子園球場方面。案の定しばらくしたら今日の第四試合は雨で中断。
便利なものである。

激しい雨が一時間くらい降ってくれたせいか、雨が上がると空気がすっかり入れ替わった感じでぐっと涼しくなった。
今日は立秋。雷鳴がもたらした、新涼であろうか。

墨田花火の思い出

川筋に近き花火のビル間より

一度だけ隅田川の花火大会に行ったことがある。

何十年前だろうか。
川筋の近くまで辿り着いたものの、ものすごい人混みでとても川縁には行けそうもない。
ただ、花火はごく近いのでビルの真上に揚がり、直径もビルの高さをとうに超えている。

しばらくは首が痛くなるほど顔を上げて花火を眺めていたが、やがてそれにも飽きて今度は喉の渇きを癒やすことに衆目一致したことは言うまでもない。

法師蝉も

本尊を遠巻きにして蝉時雨

浄瑠璃寺の池の東方の一段高くなったところに三重塔がある。

丹塗りが大変美しい国宝である。
ここに本尊の薬師如来像が納められているが、吟行当日は公開されてないので外から拝むことしかできない。
後背の山からは遠慮がちな蝉の声。なかには法師蝉も混じっているようである。

大きな紅葉の木の先端はすでに紅葉が始まっているようで,丹塗りの塔を借景に透けるように美しい。