寒入り

上弦の月は雲間に寒に入る

風呂場にいると僅かの気温差が分かるものだ。

今日は寒入りだが、特別寒さに震えることはなくゆっくり体を洗うことができた。
雲が空気を逃がさないでいてくれるのだろう。
ただ、明朝は冷え込むというから、今夜まだ覆っている雲が晴れて例の放射冷却が起きるんだろう。

新年早々

面白きテレビ始まり湯冷する

新年らしい季語でないのが残念である。

正月早々、湯冷めが原因で風邪を引いてしまった。
それというのも、いざ寝るかという時間になって、これはという番組にチャンネル入れてしまったのだ。
最近のEテレは実に面白い。昔の「教育テレビ」のイメージからはほど遠い企画のものがばんばん放送されて、目が離せなくなってしまった。BS3に加えてEテレの番組表は要チェックだ。

初湿り

御降や天気予報の外れ初

雑煮にもあきて昼は近くの廻る寿司へ。

店を出たらにわか雨、時雨のようだ。例によって葛城に日矢がかかり、まるで一言さんの御降臨でもあるかのようだ。
反して、生駒の枯れた山肌には明るい日差しがあって好対照。

2DKの浴室で

まず嬰を先にあげたる初湯かな

若い父、あるいは母かもしれない。

指を固く握りしめた赤子も、やがて大きな欠伸もしてご機嫌のようす。
一方が赤子を風呂にいれ、他方がそれをバスタオルで受け取る役割。

まずは、平和な年明けである。

一日の一番美しい瞬間

元朝の曙光とあらば二礼して

今時分の曙光は高見山のシルエットをくっきり映し出して本当に美しい。

上空に絹雲がかかり、その底が金色にまぶしく輝いてくると、神々しいとまで思える朝もある。
そんなときは、まだ日が昇らぬうちから、やがて登ってくる日の神さまに向けて両手を合わしている。
遠く南嶺の吉野、大峯の稜線はまだ暗いが、それでも黒々とした山塊ははっきりと認められる。
あと数分ほどでそれらの峰にも赤い光がさす美しい瞬間があるのを知っているが、階下の猫たちが気配を察して騒がしいのでゆっくり眺めているゆとりはない。

去年今年猫の親子と起居ともに

明けましておめでとうございます。
皆さまにトリまして今年もよい年でありますように。

よいお年を

除夜の鐘誰か聞きつけ壁時計
救急のサイレン混じり除夜の鐘

この一年、おかげさまで休みなく来られました。

十数年ぶりに風邪で寝込んだ日もありましたが、重篤ということもなく乗り越えることができたのは、何よりだったと思います。
駄作を連ねるだけの毎日でしたが、みなさまの励ましがなければとても続けられるものではありません。
本当にありがとうございました。
五千句のうち三分の一くらいは刻んだことになりますが、古稀を迎える来年も頑張りますのでかわらずよろしくご声援ください。
野球選手のお立ち台インタビューみたいですが。

みなさまも、どうかよいお年を。

絮のほどけて

枯尾花ここださはさは空を掃く
暴れ川いま茫漠と枯尾花
暴れ川肥沃もたらし枯尾花
砂利採って尽きぬ中洲の枯尾花
州にダンプシャベルカー来て枯尾花
ここよりは車入れず枯尾花
下り来て大河デルタの枯尾花
舟下り芒枯るるを見るばかり
草として枯れ馴染みゆく芒かな
草として生きた証の枯芒
草として栄えある名負ひ枯尾花
背広着て芒枯れたるやうな背

ふんばって靡いているようでも今にも千切れそうである。

一面の芒原の穂はすっかり飛ばされて骨と皮だけなのだが、意外に弾力は残していて少しの風にも反応している。
春を前に焼け野となればまた新しい芽を伸ばしてくれるだろう。