画架背負ひて徘徊もまた花曇
絵はいまでも苦手だが、過去一回だけコンクールに入選したことがある。
それもはるか昔、たしか小学校4年生のときでなかったか。その年から水彩画を習うことになっていて、新学期の前に絵筆や絵の具など買ってもらったばかりであったと思う。
近所にハイソな家の同級生がいて貧乏な家の子とよくつきあってくれたものだと思うが、まだ春休みであったか、写生に誘われて言われるままに出かけた。その子には姉もいて、水彩画にも手慣れた風だった。河原に降りて下から見上げるようにして桜の土堤を描こうということだった。
今考えてみても、なかなか面白いアングルで、土堤の先には橋もかかっていてこれも画用紙の端に入れた記憶がある。
市主催のコンクールに応募したことなどすっかり忘れていた頃、クラスの先生から入選を聞かされたときはたいへん嬉しかった。
今思えば、カメラで言えば広角レンズで切り取ったような画角で、友達に言われるままに河原に降りたことが決め手だったと思う。一人だったらとても思いつかなかったろう。
そんな得難い友人も間もなく転校となって、以来再びコンクールに応募する機会はこなかった。
