サイン

梅雨留守の合間にはたす一仕事

梅雨と言っても梅雨ではない。

かと言ってかっと晴れた梅雨晴れ間でもなく、いわば梅雨と梅雨晴れ間の間隙。
今日はそんな一日であった。湿度こそ振り払いたいほどの粘着質的なものがあるが、曇り空で気温もいくぶん救われる日。
ここぞとばかり、やりたくても暑さでやれなかったことを一掃しようと畑へ出かけた。
ところである、ものの三十分ほどで音を上げてしまった。体が異常に発熱するようでそれ以上いたら危険というサイン。
這々の体で逃げ帰る始末となった。
だんだん無理が利かなくなってきたようである。

煮えない

田水沸きうごめく蝌蚪の月遅れ

油面のようにぎらぎらとした光りを返している。

足を突っ込めばおそらく長くは入れないくらい熱く湯のようになっているはずだ。
そんな熱い水田にちょろちょろとうごめく黒いものが見える。
最近孵ったおたまじゃくしである。春の季語とされるが、種類によっては今ごろ孵化するものがいるようで、多分これは雨蛙の類いではないかと思う。
水深十センチ足らずの田水だから、晴天が三日も続けばたいていの生きものは煮えたぎったり、生息できないと思われるがこの逞しさはどうだ。
これらを狙って鷺の仲間が集まるのをよく見るが、日中のこの熱さでは鳥だって休んでいるに違いない。

間抜け

忘れ物取りに行く日の盛り

金輪際出ないと決めて以来。

日中こもりきりの日がもう何日か続いている。
夕方五時が過ぎて、もし風もあって日中の熱さが残っていなければ出てもいいが、あいにく夕方は夏至から二週間も経つと早く暮れかかってくる。人として活動できる時間が夏が深まるにつれて短くなるという皮肉。
こんなとき電車に忘れ物などして終点の駅まで来いと言われるようなら、どれだけ間抜けなことか。

二リットル

緑陰や風と帽子と木のベンチ

熱中症を避けるために物陰に入って水を摂れという。

だがしかし、畑や田圃には陰をつくるものなどほとんどない。
小屋、納屋でもあればいいのだが、仕方がないのでインゲンの棚に陰をもらってひと休み。
ただ、腰掛けがないとなかなか休んだ気にはなれないもので、長くもいられない。
果物でも植えれば緑の陰もできるのだが借地ではそうもいかないし、結論としてはできるだけ早く用件をすませて帰るにしくはないのである。ペットボトル2リットル分など医者に言われなくても、毎日飲める日が続く。

悲しく碧い

塵芥出したきりに冷房入り浸る

ひたすらこもる。

冷房のきいた部屋からは一歩も動かないと決めて一日。ほんとうにそうなった。
数字からすれば35度には達していないから猛暑日ではないのだけれど、もう体が危険だと教えてくれるような日中の暑さはどうだ。
実際は朝ゴミを出してから、頼まれてバイクにガソリンを入れてきたのだけれど。
夕方の空が悲しいくらい全面碧い。

魂胆

効能にほれてどくだみ煮出しけり

たしかに匂いはきつい。

草が大好きな猫でさえ顔をそむけて逃げていった。
鍋に移って叱られるのもいやなので、家人の帰りを待って軽く煎じる。煎じるというより、匂いを飛ばさぬように沸騰寸前に四五分煮るだけである。
何でも虫の嫌いな匂いだそうで、当たり年のカメムシにお引き取りいただこうという魂胆である。

鉄則

ヨーグルト匙でつぶして朝曇

朝のうち辛うじて体を動かせたのはどんよりとした曇り空のせいだったのだろう。

しかし、昼頃になってかっと照り始めたらもういけない。
熱中症予防のために冷房を入れねばならなかった。
もともと高湿度であったのにくわえて急激な気温の変化の度合いと言ったら身の危険を感じさせるには十分で、これでもう午後は外へ出る気はまったく失せてしまった。
危うきに近寄らず。夏の鉄則である。